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2016-08-25

【旅人人生備忘録】少女


少女は時折
既に何かを悟ったような表情で
じっと遠くを見つめていた

その表情のあまりの深さに
私は胸が締め付けられるような思いさえした

彼女は今日もあの小さな食堂から
時折遠くを眺めているのだろうか。

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2011年1月
短期でしたがタイのプーケットで
食堂のスタッフとして働かせてもらったことがあります。

食堂のスタッフはタイ人のオーナを含めて3人。

そのうちの一人がミャンマー出身の13歳の少女でした。

彼女は13歳とは思えないくらいテキパキと働き
そして13歳とは思えないくらい大人びた
どこか哀愁のある表情で
ときに食堂の外をじっと眺めているのでした。

私は食堂の隣のカーテン屋さんにホームステイをさせてもらっていました。
カーテン屋さんにもまた10歳の娘さんがいて学校に通っていました。
とても賢いお子さんのようでした。

私がホームステイをしている最中に
たまたまタイの「子供の日」があり
私は午前中の食堂の仕事を休んで
ホームステイ先の子供と「子供の日」のお祭りにでかけました。

午後、食堂に戻ると
いつもと変わらず食堂スタッフの少女はもくもくと働き
そしてやはり時折遠くを眺めているのでした。

ある夜、私はホームステイ先の子供とナイトマーケットにでかけ
小さなピアスを買って帰り、食堂の少女にプレゼントしました。

少女は「ソーイ、ソーイ(きれい きれい)」と言って喜び、
最後に小さくそして優しい声で「コップンカー(ありがとう)」と言ってくれました。

翌日、少女は
決して多くないであろう彼女のお小遣いで
私にコーヒーをごちそうしてくれました。
その冷たく甘いアイスコーヒーは
プーケットの暑さに参っていた私の身体に
優しく染み込んでいきました。

食堂に出前の注文が入ると
私は少女を自転車の後ろにのせて
少女の指示に従って自転車を漕いで作り立ての料理を運びました。

でこぼこ道に自転車がはずむたび
きゃっきゃと言って喜ぶ少女の声に振り返ると
13歳らしい無邪気な笑顔でいっぱいの少女の顔が
目に飛び込んできました。

ある日、タイ人のオーナーが教えてくれました。
彼女は、ミャンマーから出稼ぎに来た少女なのだと。
共に暮らす家族がいたのかどうかは、その時はわかりませんでした。

 

誰のせいでもない、抗えないものが世の中には存在します。

遠くを見つめる少女の瞳は
すでにそのことを悟っているようでした。

自分が生きてきた環境が当たり前だと思わないように
私は、いつも心に留めておきたいと思いました。

少女を乗せて漕いだ自転車のペダルの重さ
少女らしくあどけない笑顔
ごちそうしてもらったコーヒーの味、
そして、遠くを見つめる眼差しを。




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